相続コラム01【相続はどのようなときにおこるか、何を相続するか】

みなさんは「相続」についてどのようなイメージや知識をお持ちでしょうか? 聞いたことはあるけれど、実際どうなるかは想像できない、兄弟と争いになるのは嫌だ、などと漠然と感じておられる方も多いのではないでしょうか。 遺す方も遺される方も、円満な相続ができるように、相続に関する基本的な知識やポイントを解説したいと思います。

相続はどのようなときにおこるか

相続は、人が死亡したときにおこります。 何を今更と思われるでしょう。それでは、ちょっと小咄。このようなケースはどうでしょうか。

ケース1:私の父は20年程前に家出をし、それ以来音信不通で探しても見つかりません。今や生きているのか死んでいるのかも分かりません。
ケース2:私の父は飛行機事故に遭いました。その事故では多数の方が亡くなりました。父が搭乗していたことは確かですが、父の遺体は見つかりませんでした。

ケース1や2のような場合、この父が死亡したことを直接確認することができません。死亡が確認できないということは相続できない?!そうだとすると大変です。

そこで、法律では、ケース1のような場合に「失踪宣告」、ケース2のような場合に「認定死亡」という制度を用意しています。
失踪宣告は、裁判所に申立てをします。失踪宣告がされると、ケース1のような失踪では、失踪から7年間が経過したときに死亡したものと扱われます。 認定死亡は、事故等を取り調べた役所が死亡を認定し、戸籍上死亡したものとするものです。戸籍記載の死亡推定日時に死亡したと扱われます。

何が相続されるか

亡くなった人、すなわち相続される人のことを「被相続人」と呼びます。次に何が相続されるのか、つまり相続の対象のお話です。

当然、その人の持っていた財産ではないか、と思われるかもしれません。相続イコール不動産、現金、預金などの価値あるもの、というイメージが強いのではないでしょうか。
たしかに、価値ある財産が相続の対象であることは間違いありませんが、法律には「相続人は……一切の権利義務を承継する」と書かれています。「権利」とは、不動産や現金、預金などの財産もあれば、生前に注文していた品物がある場合にそれを引き渡してもらう権利なども含まれます。「義務」とは、生前の借金があった場合に返済する義務などです。

相続の対象は、被相続人の死亡時に被相続人に属していた一切の権利・義務、すなわちプラスの財産もマイナスの財産も一切なのです。

ただし、例外もあります。例えば、お仏壇、位牌やお墓です。これらが相続の対象となるとすると、所有者が亡くなったら、相続人全員で共有して、それを遺産分割で分けて、といったことになってしまって、どうも跡取りが引き継ぐという一般的な感覚からはおかしな事態となります。
そこで、このような財産については、相続の対象とはならないとされています。これらの財産は、相続とは別に、祭祀主宰者と呼ばれる、先祖の法要などを行っていく人が引き継ぎます。
誰が祭祀主宰者であるかについては、1)被相続人が指定した人がある場合はそれによって、ない場合は、2)その地方の慣習によって、慣習が明らかでなければ、3)家庭裁判所によって判断されます。

それでは、被相続人がかけていた生命保険の保険金などはどうでしょう?
例えば、こんなケースを考えてみましょう。

ケース3:私の父は、受取人を兄として保険金額1,000万円の生命保険に入っていました。父が死亡して兄と私が相続をすることになったのですが、兄は保険金が1,000万円ももらえるので、父の残した財産1,000万円はすべて私のものだと思います。

たしかに、父が死亡したことによって手にしたお金という意味では、保険金の受領は、感覚的には相続と同じように感じられます。しかし、受取人指定のされた保険金については、受取人は自らの固有の権利として保険金を受け取るもので、そもそも被相続人の権利であったものではないのです。

上述しました通り、相続の対象は「死亡時に被相続人に属していた権利」ですから、この保険金は、例外というよりも、むしろ、そもそも相続の対象外ということとになります。
ケース3では、兄は、固有の権利として1,000万円の保険金を受け取り、父の残した財産1,000万円のみが相続の対象となります。

次回は、誰が相続をするのか、についてお話したいと思います。

弁護士法人 古澤早瀬|愛知県弁護士会

古澤仁之

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