ラ・カーサさんの江南スタジオに伺うと、外ではスタッフたちが植木のお手入れ。 1Fにはおしゃれなカフェ空間が広がります。現れたのは、カジュアルな雰囲気の中に品の良さが漂う紳士、熊澤社長さんでした。

la casa うちでは設計のスタッフもカフェに立つことがあるし、庭の手入れもしますよ。 安城ではヤギの世話もあります。 実際に生活する、暮らすということがわからないと家づくりはできないですからね。 お客様は家庭、おうちを作りたくていらっしゃるのですから。

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la casa 当社は、元々は材木商です。 創業1902年としていますが、実際には江戸時代から材木を商っていたようです。昔は材木屋に大工だとか左官だとかいろんな職人さんたちが集まってきて、お城も橋もすべて材木屋が作っていたんです。 私自身が生まれた時も、家のまわりに材木がずらっと立て掛けてあって、大工さんたちと一緒に大勢でお昼ご飯を食べたり、建前をやればイワシを焼いて、木遣り(きやり)を歌ったり踊ったりしてました。 材木屋には地域のいろんな情報や人が集まってくるんです。車もそんなに無い時代だったから、隣町に病人がでれば救急車代わりに病院にのせていったり。そういう時代でしたね。

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ところが、高度成長期にハウスメーカーが出来てきて、大量に作るようになってきました。でも、今はそういう時代じゃなくなってきて、顔の見える関係で、一戸一戸ちゃんと作らないといけないと考えています。 ここでカフェをやっているのも、OBのお客さんたちが毎月食事会をしたり、イベントをしょっちゅうやったりと、昔の材木屋がそうだったように、エリアの人達が集まってくるようなところ、何かにつけて、そんなところだといいなぁと思っているんです。

家を作って終わりではなくて、ずっとお付き合いが続くわけです。

だから、愛知県から出て行こうとも思っていないし、何百棟もやろうとは思っていない。 いいものを一棟ずつ顔の見える形できちっとやって、建て終わったあともここにきてお茶を飲んでいただいたり、一緒にパーティしたりできることがいいですね。

我々の仕事は、お客様のJOYある豊かな暮らしのお手伝いをすること。家をつくることだけじゃないですよ。それがうちの会社の共通理念なんですね。

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実はお米も丹後で作ってもらっています。 日本人なんだから一年に一回くらい新米の一番おいしいのがとれたときにみんなで食べようよと。なので田んぼ一枚分をなるべく農薬を使わないで、作ってもらっています。だから田んぼにクモの巣が張ったりしているんですね。 それを買い取って、地元で精米してもらってパッケージ詰めしてOBのお客さんや、ラカーサに関係している方々に原価でお分けしているんですね。

今治タオルも作ってもらってるんですよ。家具もやっています。 ラカーサが考える学習机、ラカーサが考えるランドセルがあってもいいでしょうし、我々が考えるアパレルもやりたいなと思っています。 つまり暮らし全般を豊かにするもの、こんなのあったらいいよね、と思うものをオリジナルで作る。 我々がいいと思うもの、豊かだなと感じるもの、ちょっとウィットにとんだものを考えていく、それいいなと思ったときに、1つ作ると高くなっちゃうけど千個作ればそれなりに作れるので、みんなでいいものをシェアして使う、お米もそういう感覚です。

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住宅もそうですが、センスが大切、ガキっぽいセンスじゃなくて、大人っぽいセンス。 別に豪華なものじゃなくていいんです。3年くらいすると飽きるようなものではなくて、ちゃんと地に足のついたきちんとしたセンスのいいもの。 例えば、原宿の流行り物じゃなくて、ヨーロッパの歴史に根付いた品のいいセンス感が必要だと思う。 例えば桂離宮は今でもいい、それはなぜいいかというと、その時代だけをとらえたのではなくて、ちゃんと品があるんですよ、落ち着いた。それがないとダメだと思いますね。

あまりデザインデザインしすぎちゃっても人は飽きる。毎年一つずつ年をとっていくし、ものの見方も変わる。基本的にカッコいいの一歩手前、そこをどうバランス取るかが大事、いかに全体を調和させるかですね。 何を見て、そこを心地良いと感じるか、あとは使い勝手と見え方のバランスを大切にしています。構造とか温熱環境とか、そういうのはあたりまえにしていることです。

バランスというのは暮らしの中でもとても大切なことです。 住宅にお金かけるばかりが能じゃない、そこを安く抑えて、豊かに暮らしたい、そこにJOYがあればいいと思います。 ただし、安っぽい家づくりならやらない方がいい、作んない方がいいよって言うんです。「やめたら」って本当に言っちゃう。 無理してローンをかかえるよりも、一週間に一回とか、一ヶ月に一回美味しいものを食べに行った方がいいじゃない。めいっぱい背伸びをして家を作ってラーメン啜っているようじゃ悲しすぎるでしょう。 我々の仕事は「家」じゃないんですよ、その先にある、どう生きていくかだと思っている。

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お米の話をしましたが、9月の末になると、その新米をこの庭のかまどを使ってご飯を炊きます。トン汁や、お漬物もスタッフが作ってお客様たちとみんなで食べるというパーティーです。 こうしてエリアの人達とJOYある豊かな暮らしができるといいなあと思っています。 それは若いスタッフたちの体験にもなっているんですね。 最初に話したように実際に生活する、暮らすということが身につきます。

ラ・カーサは施工まで出来るアトリエ設計事務所というイメージです。 家づくりは、基本的に設計がきちんとできるところが、自社で施工しなきゃだめだと思っているからです。 今後は社内でデザイナーズコミュニティを立ち上げて、家具デザイナーさんも含め、デザインに関わる人たちが互いに相乗効果でテイストを分かち合えるといいなと思っています。 スタイリッシュでセンスが良くて、JOYある暮らしにフォーカスしながらデザインしていきたいですね。

(2015.8.11 取材)
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社名

la CASA|ラ・カーサ

住所〒460-0008 愛知県名古屋市中区栄3-18-1 ナディアパーク デザインセンタービル7F
TEL052-251-3550
URLhttp://lacasa.co.jp