「勉強だなんて思ったこともない」。取材中、何度も耳にした言葉です。自分で考えることが楽しくて仕方ない、そんな様子が言葉の端々に感じられました。今回お話を伺うのは、株式会社 三戸建設の代表取締役、三戸敬介さん。「なぜ?」を無視せず、興味のままに物事を探求する姿勢こそ三戸建設の強みなのかもしれません。

成り立ち

物がなかった時代に地域性を活かして
材木やへと転身したのが三戸土木です

戦前に土木専門で祖父が興した会社が、三戸建設の始まりです。当時は河川の改修や、橋の取り付けを行なっていたようです。そして戦後、物がなかった時代に地域性を活かして材木屋へと転身したのが三戸土木です。その後大型掘削機が台頭し始め、素材屋か、陶器屋か、工務店かという選択肢がある中、なぜか一番大変な工務店を選んだのが父です。母はというと陶器の工場を経営しており、両親とも多忙を極めた毎日、かまってもらえませんでした。そのために子供の頃から機械いじりが好きでしたね。

成長すると、父の勧めで東海工業専門学校に入学しました。しめしめ、遊んで過ごしてやろうと思っていたのですが、とんでもない。短期で即戦力を育てるための学校で、非常に大変な思いをしました。そこではまず測量を学び、次いで建築士の資格を取得しました。卒業後は地元のゼネコンで2年、修行しました。そこで経験した現場監督の仕事は指揮権があり、とても楽しかったです。そして26歳で家に戻って働き始めました。

株式会社三戸建設

見えない部分を明確に

株式会社三戸建設

戻ってきてから始めたのは、ゼネコンの請け仕事です。それまで、言い方は悪いですが「どんぶり勘定」だった見積もりも、細かく積算して出すように変えました。また現場も細分化し、専門職がそれぞれの持ち場で仕事をするやり方にしました。結果的には品質管理が行き届くようになり、高品質な仕事を納品できるようになったと思います。

工務店が集まる会合にも顔を出すようになったのですが、その現状にびっくりしました。例えば生コンの配合はプラントごとに内容や比率が異なるのですが、そのことも知らないし知ろうともしない工務店がとても多い。確かにこうした部分は業者さん任せになりがちなのは分かるのですが、やはり基礎に関わる大切なことなので知っておくべき部分です。

また昔の建築家はイメージをスケッチで伝える人が多かったのですが、これを施工図に起こすのは工務店の仕事です。ここである程度、実力がわかるのですが今ではちゃんと描ける工務店も少なくなったと思います。ちなみに三戸建設では、施工図と図面が同じくらいの量になります。

良いものは何でも

なんでもっと暖かい家が作れないんだ

これが省エネ住宅に対する興味の出発点です。昔は情報も少なく、断熱材を入れるのにも試行錯誤の日々でした。たとえばFPパネルやテクノストラクチャも、たぶん全国で三戸建設が初めてやったと思います。

しかしこれらを自分でやれたらコストも抑えられるし合理的だと、いろんな資料や文献を調べたりしました。そして良い出会いもあって、空気層で断熱する方法を知ります。いわゆる外断熱です。思えばこれは昔やっていた、コンクリートにポリスチレンフォームを割付していたのと同じ原理だと気付きました。

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こうして断熱の問題をクリアすると、次の興味は必然的に気密と換気に移りました。農業用や土間用のビニールシートを使っていろいろ試したのですが、最終的にはスウェーデン製の引っ張っても伸びない素材があることを知り、そこに落ち着きます。計算通り、体積に対して2分の1を換気できるようになりました。

株式会社三戸建設

水道の給排水も、陶器の工場を請け負った際に使っていたチャンバーを組む技術を住宅に応用していました。後で知るのですが、これは大手さんも取り入れていない最先端の技術だったそうです。また昔はねじ切りのステンレス管で配管していたのですが、これは水圧に対して少し心配な部分です。そこでカシメ式のモルコに変更。職人さんたちは、大いに喜んでいましたね。

そして次は暖房です。輻射式や蓄熱暖房といった、新しくて良い技術はどんどん取り入れましたね。ヒートポンプに関しては、20年くらい前に発表会があった際、その場で導入を決めました。これもたぶん日本で1号か2号だと思います。

設備は楽しい

株式会社三戸建設

建築全体を押さえていないと設備へはいけない

いろいろと新しい技術を取り入れたり開発したりしてきましたが、一つ言えることがあります。それは建築全体を押さえていないと、設備へはいけないということです。これまで私は学校や役場、お寺や神社、工場から住宅まであらゆる施工を行ってきました。こうした知識と経験があって初めて、「建築という全体の中の設備」という視点を持つことができます。

株式会社三戸建設

設備は楽しい

メーカーさんに全てお任せはラクですが、自分で考えることが理解へと繋がり手間やコストも削減できます。何よりお客様のためにもなります。「なぜこうなるのか」を捨て置かず、ちゃんと理論と計算で考えるべきです。根拠があれば、設備はやり方によって中身が大きく変わります。逆に言えば、だからこそ「設備は楽しい」のです。建築のようにアート的な文脈を辿っていくのも好きですが、それだけでは工務店は務まりません。

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きちんとした仕事をするのがプロとして当たり前

先ほど、生コンの話をしましたが、三戸建設ではベタ基礎に立ち上がりを一緒に打ち込みます。それは強度の点で、二回に分けた場合と全く違うからです。にも関わらず、一緒に打ち込むなんて工務店はほとんど聞いたことがありません。業界的にも、「まあいいか」というような空気を感じます。
でも本当にそれで良いのでしょうか?基礎は住宅を支える、最も大切な部分なのに。実はコンクリを流すこと一つとっても、綿密な打ち合わせが必要なのです。お客様に見えない部分こそ、きちんとした仕事をするのがプロとして当たり前だと思います。

何事も「基礎」が大切

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もっと本質的な部分に目を向けても良いのでは

住宅に対する考え方が、クルマ選びのようになっていくことが少し寂しい気がしていますね。スライドドアが付いた、内装のちょっとおしゃれな黒のミニバン、が悪いとは言いません。しかしもっと本質的な部分、フレームや足回り、エンジンそのものなどに目を向けても良いのではないでしょうか。

住宅で言えば「基礎」「構造体」「設備」といった、基本の部分です。素敵なキッチンが欲しい!その気持ちはよく分かります。でも基礎の部分に当てる予算を割いてまで購入するのは、お勧めできません。なぜなら、基礎は後から変えたいと思ってもキッチンを取り替えるのとは訳が違うからです。

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三戸建設では神社仏閣も手掛けることができる
腕利き大工が仕事をします

震性能は誰もが気にしておられますが、それもあくまで基礎あっての話です。いくら家が揺れに強くても、基礎が弱いと意味がありません。そして基礎や設備といった部分をきちんと仕上げるには、腕の良い職人さんの力が不可欠です。

三戸建設では神社仏閣も手がけることができる腕利き大工が仕事をします。また建築全体を見渡せる、知識と経験を兼ね備えた現場監督も在籍しています。こうした人たちと一緒に家をつくることができることも、工務店選びにおいては大事なポイントの一つではないでしょうか。

株式会社三戸建設株式会社三戸建設

取材:2016年11月4日

社名

株式会社三戸建設

住所〒509-5126 岐阜県土岐市土岐口北町3-10
TEL0572-55-2675
URLhttp://mito-net.com