相続コラム02【誰が相続人となるのか?】

今回は、誰が相続をするか、相続人についてのお話です。

みなさんもよくご存じのように、遺言によって死後、誰かに財産をあげたりすることができます。これは、相続人でない人に対してもすることができますが、以下では、法律が相続人をどのように定めているかをお話しします。

誰が相続人となるのか

相続人となりうるのは、(1)被相続人の配偶者、(2)被相続人の血族(けつぞく)で、被相続人が亡くなった時に生存していた人です。

(1)被相続人の配偶者は、存命であれば必ず相続人になります。
配偶者は、法律上結婚していること、つまり戸籍上夫婦であることが必要で、内縁関係の場合には法律上の相続人とはなりません。

(2)血族というのは血のつながりのある人、つまり子、親、兄弟などのことです。
義理の親、義理の兄弟などは血のつながりがありませんので、血族ではなく姻族(いんぞく)といって、相続人にはなりません。

血族のうち、誰が相続人となるかについて、法律は、血族を
①子
②直系尊属
③兄弟姉妹
の3のグループに分け、その順に、先の順位のグループの人がいたらそのグループのだけが相続人となることになっています。

②の直系尊属とは聞きなれない言葉かもしれません。
尊属(そんぞく)というのは、親、祖父母、おじ・おばなどのように、自分よりも前の世代にある血族のことです。そして、直系というのは、家系図を書くとまっすぐ上下にくるような人たち、つまり親・子の関係でつながっていくたち人のことです。
このことから、直系尊属とは、親、祖父母、曽祖父母等のことで、おじやおばは含まれないということなります。

ケース1:Xが亡くなりました。Xが死亡したとき、Xには、妻A、子B・C、親D・E、兄弟F・Gがいました。

このケースでは、妻Aは(1)被相続人の配偶者ですから、常に相続人となります。
次に(2)被相続人の血族については、①子、②直系尊属(親)、③兄弟姉妹がいることになりますが、先順位のグループの血族がいる場合には、そのグループのみが相続をしますから、ここでは、①の子であるB・Cのみが相続人となります。

では、このようなケースはどうでしょうか。

ケース2:Xが亡くなりました。Xには妻A、子B・Cがいましたが、Xが死亡したとき、子Bは既に亡くなっていました。Bには子(Xの孫)Hがいます。

先にお話したルールのみで考えると、妻A、子Cの2人のみが相続人のようにも思えます。
しかし、法律には、上記のルールの他に、Xの孫Hに相続をさせるための「代襲」(だいしゅう)という制度があります。

代襲相続とは何か

代襲とは、本来相続人となるべき人(ケース2の子B)が被相続人(X)よりも先に亡くなってしまった場合、Bが生きていれば相続するはずだったものをその子が相続するという制度です。Bの子であるHは、Bが相続するはずだったものを代襲により相続することになります。

そこで、ケース2の相続人は、妻A、子C、(子Bを代襲して)孫Hの3人ということになります。

ケース2で、もしHも亡くなっていたときにはHの子がさらに代襲します。兄弟姉妹が相続人となるときにも代襲がありますが、その場合、代襲は兄弟姉妹の子(被相続人のおい・めい)までで、その子は代襲しません。

ケース3:Xが亡くなりました。Xには妻A、子、両親、兄弟F・G、Fの子Iがいましたが、Xが死亡したとき、既に子、両親、兄弟Fは亡くなっていました。

このケースですと、まず、妻Aは配偶者ですから常に相続人となります。
次に、血族です。
子(①)をみると、Xより前に既に亡くなり代襲者もいませんので該当者がありません。
次の順位をみます。直系尊属(②)である両親も既に亡くなっており該当者がありません。
そこで、相続人は兄弟姉妹(③)ということになります。兄弟Gは存命ですので、Gは相続人となります。兄弟Fは既に亡くなっていますから、その子Iが代襲し、Iが相続人となります。

ケース3の相続人は、妻A、兄弟G、兄弟の子Iの3人となります。

相続人になることができない場合

上記のようなルールに従えば相続人となるべき人であっても、相続ができない場合があります。

例えば、被相続人を殺害したような場合や、被相続人を脅迫して遺言を書かせたような場合などが法律に挙げられています。このような行為をしたときは、「相続欠格」といって、当然に相続権を失います。

他に、相続欠格となるほどの重大な事由はないものの、被相続人が、この人には相続させたくないと考えるのももっともだといえるような事情がある場合に、被相続人の意思にもとづいて家庭裁判所が相続権をはく奪する「廃除」という制度があります。

廃除がみとめられうる事情として、例えば、病気の時にひどい環境に追いやった(虐待)、人格否定をするような発言を繰り返した(侮辱)、親の金をギャンブルに金をつぎ込んだ(非行)、非行を繰り返した挙句暴力団員となった(非行)などが考えられます。

廃除は、被相続人が生前に家庭裁判所に請求するか、遺言に残すことによって排除の意思を示します。廃除が認められた場合には、その旨が戸籍に記載されます。
なお、相続欠格や排除によってある者が相続権を失った場合にも、その子や孫は代襲をすることができますので注意が必要です。

弁護士法人 古澤早瀬|愛知県弁護士会

古澤仁之

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