「交通事故よりも多い、お風呂場の溺死」。 対策のポイントは、「暖かい住宅づくり」!

皆さんは『ヒートショック』という言葉をご存じでしょうか?

最近の住宅は、ある程度、断熱性能を強化することが普通になり、以前より暖かい住宅が建設されるようになりました。しかし、それ以前に建てられた住宅が多いことから、日本の住宅全体の約7割は、まだまだ、寒々とした「脱衣室と洗い場」が多いようです。

そのため、お風呂場で溺死する人の数は年間約1万9000人と言うデータも出ています。この数は、年間の交通事故死の実に4倍にもなるそうです。その多くは高齢者の方たちとのこと。

暖かいリビングから寒い廊下に出て、さらに寒い脱衣室で裸になり、今度はいきなり熱い浴室に入浴することで血圧が上昇するのです。寒暖の差が大きく、体温調整が効かなくなり、「心筋梗塞」や「脳卒中」を引き起こします。これがヒートショックです。

そこで今回は、新築や改修住宅の健康対策、事前防止策をまとめて見ました。

「熱中症」以上に浴室内の事故が多い

今年の夏は、例年になく暑いと感じたのは私だけでしょうか?そのため、熱中症でお年寄りが亡くなるというニュースがテレビや新聞などで聞かれたと思います。時には、運動選手が倒れたこともありました。2020年東京オリンピックの時の夏は大丈夫なのでしょうか?心配になるところです。

例年のごとく、秋が過ぎ、冬がやって来ますが、前項でも述べましたように家庭内での事故は、冬を中心に起こるお風呂場での溺死事故の方がはるかに多いことです。日本人が好む入浴法として、冷えきった体をいきなり熱い風呂に入る。温水温度が高いことも問題のようです。

このグラフは、東京都がまとめた都道府県別のCPA(入浴中の心肺停止)状況件数です。東海地区は、岐阜県がほぼ真ん中、三重県は件数が多く、愛知県は真ん中よりも少ないようです。全国では、平均的に暖かいと言われています香川県、和歌山県、東京都などが最も件数が多くなっています。逆に、沖縄の次は北海道が少なく、住宅の断熱、気密性能の格差がこんな結果になっているようです。つまり人間の健康、長生きするには、暖かい住宅づくりが大きなポイントになっているようです。

温度差や浴室内の熱中症で意識を失う

入浴中の溺死は、次のような原因で意識を失って発生。

  1. 浴槽内で熱中症のようになり、脱水症状や末端血管が拡張して意識を失う。
  2. 室内と脱衣室、浴室、浴槽内の温度差が大きく、血圧が急変動し、脳虚血などになり、意識を失い、浴槽内で溺れる。
  3. 温度の急激な変化で血圧が大きく変動することで、のぼせて意識が無くなり、浴槽室内で倒れてしまうなど。
  4. 原因は、日本固有の入浴方法にもありそうです。

一般的には、熱い湯に肩までつかるという日本固有の入浴方法があります。これがある程度、浴室事故に影響していると言われております。ある会社のデータによりますと、高齢者の死亡率を国別では、日本の75歳以上の男性の溺死、死亡率が34.6%なのに対し、ギリシャは13.2%、韓国は10.9%、アメリカは2.4%。75歳以上の女性でもギリシャや韓国、アメリカなど主な国と比べて日本は溺死の死亡率が高くなっているようです。この原因は、入浴方法が大きく左右しているようです。

「消費者庁」では、予防方法を提示、注意喚起を呼び掛けています

  1. 入浴前に脱衣所や浴室を暖める
  2. お湯の温度は41度以下で、漬かる時間は10分までを目安に
  3. 浴槽から急に立ち上がらない
  4. アルコールが抜けるまで、また、食後すぐの入浴は控える
  5. 入浴前に、同居者に一声かける

また、一人での入浴を避けるために、スーパー銭湯、公衆浴場、銭湯なども利用することも賢明ではないでしょうか・・・。

ヒートショックによる家庭内の事故を防ぐには・・・

「ヒートショック」とは、「家の中の急激な温度差」によって起こるもの。つまり「暖かい居室から、寒い脱衣室、そうして熱い浴槽」という激しい温度差を体感することによって、体内に急激な血圧変化が発生し、体内に影響を及ぼすことを言います。特にめまい、意識を失う現象です。

「高齢者による溺死」は、浴槽内において「失神する」ことによって発生すると言われております。その「失神する原因」の多くが、「ヒートショック」であるとも言われております。「暖かいリビング」から「寒い脱衣所。そして裸になり」、そして「暖かい湯の中」という急激な温度差を繰り返し体感することで失神を起こしてしまうようです。

対策として、以下の事が考えられます。

ヒートショックを防ぐには、「全館冷暖房」住宅が必要です。

「ヒートショック」を防ぐには、当たり前ですが、家の中に急激な温度差を作らなければ良いのです。最近では、設備機器が充実しており「全館冷暖房」という考え方が普及されつつあります。家の中全体を「暖房」「冷房」にすることでトイレ・風呂場・廊下がリビングに比べて寒くならず、「ヒートショック」を解決してくれるようです。

しかし、一般的には、「全館冷暖房」の廊下やトイレまで冷暖房を入れることで費用がかかります。「ヒートショック」が危険であると知っていても、冷暖房費用に毎月約10万円を超えるようでは、なかなか普及しないのが現実です。

安価な暖房費用(冷房費用)で「全館冷暖房」を実現するには、「高断熱・高気密住宅」にすることが、一番大事!

「家の中から外へ暖房熱(冷気)・暖気がどんどん逃げ出す」から、エアコン、暖房機などの費用が高額になってしまいます。

「高断熱・高気密」住宅は、断熱材で家全体を包み、断熱性能を高く(高断熱)することです。更に、家のスキ間を少なくして、冬季はスキ間から外の寒さや内からの暖かい空気を家の内外に出さない(高気密)ようにしてしまう住宅のことです。

断熱の強化と共に大事であり、省エネ強化には「高気密化」が一番大事だと言う方もいます。また、開口部、玄関ドア、窓は熱ロスに大きな部位です。特に枚数や引違いが多い窓は、樹脂サッシ(PVC)を使いましょう。世界ではこの樹脂サッシが常識になっています。窓結露が大変少なくなります。

これまでの住宅づくりにも、断熱材を入れてきましたが、断熱材の長所を生かした施工性に問題があったように思われます。断熱材の密度や厚さ、品質の高い材料で家全体を高断熱することが大事なのです。

その結果、1台のエアコンで全室冷・暖房が可能という住宅も出現しています。 是非、ご理解いただける建設会社様へご相談ください。


最近、居室の温度と床の温度差を少なくするために基礎も断熱する「基礎断熱」が増えつつあります。しかし、施工法や活用法に注意が必要です。

基礎断熱・外断熱工法
基礎断熱・内断熱工法

     

床断熱は、軸組工法の柱を立ててから床を張ることから、柱、間柱にスキ間ができやすく、高度な施工性が問われます。逆に基礎断熱は、基礎自体を気密化することから、室内の柱や間柱の気密、スキ間を気にしなくても良くなります。そのため、気密性アップの手法として、採用されることが多くなったのです。

寒冷地では、冬季の床下温度を利用するために昔から採用しています。東海地区では、夏季の床下温度を利用しようとしています。確かに有効であります。しかし、注意が必要です。床下は温度が一定であるため、外気、室内の温度や湿度によって、「床下結露」が起きます。温度、湿度、換気の管理が必要になります。高度な技術になりますので、是非、建設会社へご相談ください。

【参考資料】
日本法医学会企画調査委員会の浴槽内死亡事例の報告書では・・・。

「浴槽内死亡事例は、42℃程度と欧米諸国に比べ高温のお湯に、肩まで浸かるという日本人特有の入浴法から、我が国では非常に発生頻度が高いことが知られている。その多くは浴槽内での意識消失により溺水を吸引し窒息死すると考えられている。法医学の領域では、入浴中の急死の三大原因は①虚血性心疾患などの心疾患、②脳血管障害、③溺死であり、このうち心臓疾患が半数以上を占めるとされている。一方、意識消失の原因については、これまでに、①熱中症に陥り意識障害を起こし溺没するという説、②浴槽から出る、体を洗うなどの動作により、血圧変動が大きくなり一過性脳虚血発作が起こるとする説、③入浴中は座位であること、高温環境で血管拡張を来しやすいことから、低血圧が誘発されて神経調節性失神に至るという説、④不整脈が関与するという説、等が示唆されている。しかしながらその実態についてはこれまで十分把握されていなかった。」(報告書から抜粋)
下記のグラフのように、死亡率が高いのは、60歳以上の高齢者で、発生時期は、寒い冬の11月から3月まで。更に時間帯は、夕方から朝方の18時から3時のようです。やはり高齢者は、家族の支援も必要であり、住宅の性能に大きく関わっていることから、新築、改修時は、専門の建築会社へ相談してください。


株式会社シンホリ

佐藤寿也

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